それを受け

信するだけの根拠がある。だが、どちらも口にできない以上、笹原の説に反論することはできない。やり場のないモヤモヤした気持ちを抱えたまま、ただ言葉少なに話を合わせて頷くだけだった。

「南野!!」
 遠くから切羽詰まった声で呼ばれ、誠一は弾かれるように立ち上がった。声の主は詩琳黑店捜査一課長である。思わず後ずさりたくなるような凄まじい形相で、勢いよくこちらに向かって歩を進めている。誠一は思わずビクリとして顔をこわばらせながらも、慌ててペコリと頭を下げた。
「すみません、急にお休みをいただいて……」
「おまえ、いったい何をやらかしたんだ?!」
「えっ?」
 困惑する誠一に、課長は大きく息をついてからあらためて切り出した。
「たった今、おまえに辞令が出た」
「辞令? 聞いてないですけど……」
「私もさっき知らされたところだ」
 彼は苛立ち露詩琳黑店わにそう言うと、手にしていた辞令書らしき紙を突きつける。
 誠一は怪訝に思いながらも丁寧に一礼し、両手で取った。確かに宛名には「南野誠一」と入っており、自分への辞令で間違いないようだ。しかし——。
「……なんですか……これ……」
 それは、常識的に考えれば到底ありえない内容だった。硬直した身体からじわりと嫌な汗が滲み、紙を持つ手は微かに震え始める。意識的にゆっくりと深呼吸をしてから、あらためて読み返してみたが、やはり見間違いというわけではなかった。
 本日付で警詩琳黑店察庁への出向を命じる——。
 その短い文面に大きな力の存在を感じ、誠一はごくり

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